学長、失格
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143 名前:ごさく" ◆.DoLbGgHq2 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 20:58:54 ID:i5C/4+1W
「学長、失格」
神山徹(仮名)56歳、元KK大学学長
カーキ色の帽子に、灰色のポロシャツ、クリーム色のズボンといった服装と、丁寧に撫でつけた髪型、老眼鏡をかけた顔は、何ら変哲もないどこにでもいる普通の初老の男性。
しかし、顔色は非常に悪く、今にでも倒れ込みそうなほど疲弊、焦燥していて、
喫茶店で取材していた時でも、周囲を見渡してから、何度もトイレに行くぐらい。
それでも、甲斐性がなく、厚顔無恥な態度だけは当時の記者会見と全く同じである。
「あんたなんかに、この気持ちが分かる訳がないでしょ。
この2年間、どれだけの思いをして暮らしてきたか」
KK大学の学長を勤めてきたが、KK大学の上級生がダービーゲームと称した酒飲みの競争の末、集団で下級生を暴行するという愚行を犯した、居酒屋準強姦事件をきっかけに暗転へとまっしぐら。
凶悪犯罪に対する一般社会との認識のズレ、そして何よりも犯罪、犯罪者を隠匿する愚行を重ね、挙げ句の果てに公然の前に、被害者を「公然わいせつ」とセカンドレイプ。日本一の非常識学長として悪名を轟かせた。
神山がKK大学を去った後でも、
事件後の対応は悪辣を極め、ついには、KK大学から、居酒屋準強姦事件に対する被害者の多数の誹謗中傷の罪によって、学生が大量に逮捕される。
翌年には自業自得ともいえるように、定員割れ、税金の打ち切り、合併の拒否のトリプルパンチを受けてKK大学は廃校予定に。
今でもKK大学の崩壊を担い、京都のイメージを著しく貶めた張本人として、
元KK大学の学生と関西圏の住民の怒りを向けられ、
差別、迫害をされながら、日陰の中で暮らしているという。
退職金で一戸建てを買ったそうだが、連日の抗議で神経が参り、
手放ざるを得なくなり、今では京都を離れ、県外で住居を転々とするヤドカリ生活へ。
149 名前:ごさく" ◆.DoLbGgHq2 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 21:34:00 ID:i5C/4+1W
「何故、何故、何故。私がこんな目に遭わなければならないんだと、いつも夢の中でも、「アホ学長!」と電話が鳴り響いてくるんだ。
事のあらましは……。まぁ、君はよく知っているでしょう。
君は一番、マスコミどもの中でやかましかった男だったからな。
今じゃ、こんなザマだ……。
退職金も家も地位も、全て、私の手からKK大学のように消えてしまったよ。
もう、あれからは君に言われるまでもなく、人生が足元から崩壊してしまったよ。
これもあれもどれも、皆、あの事件のせいだ……。
あの馬鹿どもさえ、あの馬鹿どもの親さえいなければ、あの時にあった権力で、何とでも黙らせてやったんだ」
浮浪者当然に堕落したはずなのに、プライドだけ肥大化していた。
かつて権力を好きなままふるっていた者が、一介の新聞記者の取材料欲しさに取材に応じている。
どんなお芝居だ?と言われてもおかしくないほど、興がある光景である。
「実はね……。私は脅迫を受けていたんだ。
不自然だったとは思わなかったか?
幾ら大学に援助をしてくれるお得意様だって、
そいつらの犯した凶悪犯罪は凶悪犯罪で処理しないと、あんな記者会見は出来るはずもないだろう?
あの事件以前にも、私が大学に入る前からかなりそういった犯罪があったそうだよ。
又聞きなので信用しないだろうが、ウチは…いやKK大学は付属高校からやってくる落ちこぼれがやってくる、アホばかりだから当然モラルも質も低い。
まぁ、私も奴らと同じような学部で卒業しているから言ってもどうか……って話だが。
だが、適当に教鞭を振るっているだけで、お金が空から降ってくることに気がついてからはもう、派手にやっていましたよ。
時には、あの馬鹿どもと心の奥底で馬鹿にしながら、飲み会もやっていた時は楽しかった。
若い学生を侍らせて……」
この男は、隅から隅まで醜悪な心に満ちている。
目の前のしおれた生命体を見ていると、教育界の腐敗を自ずから確信できる、邪なオーラが双眸に満ちていた。
164 名前:ごさく" ◆.DoLbGgHq2 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 22:14:14 ID:i5C/4+1W
当時権力を振りかざしていた時期を思い出していたのか、醜悪な笑みは未だに残していた。
今、どんな状況下にあるのか分からせてやるために、ごさくはポケットから鋼鉄製のオイルライターを取り出し、
ふたを開けて、神山の前で火を全開にさせる。
すると、瞬く間に臆病者というに相応しい情けない顔と悲鳴を上げて脱兎の勢いで席の隅へと、頭を両腕を覆い被さり丸くなる。
それにしても、効果は覿面のようだ。
眼前で火柱を見るにして、あまりに薬が効きすぎたか。
左手に握ってある、ライターの火口から伸びる20センチメートルほどの青い火柱の威力を見てそう思った。
ややあって、臆病者は顔をごさくに向ける。
カエルが蛇に睨まれたかのような様子をして。
「話せ」と無言の圧力をかけると、臆病者はすぐに肯定した。
「は、はい……。
お、脅しをかけられていたって話からした方がいいでしょうか。
あれは、2月の頃でした。
あの事件が起こった頃です。
いつものように、また事をやらかしたなって思って、その居酒屋でレイプしていたって報告を受けても、しれっとしていて、税金からまた秘密裏で慰謝料を手渡した上で、事件が表面化しないように、工作をしていた訳です。はい。
今回も仲の良い弁護士、教育界の重鎮に任せれば、今回もそうなる。そう思っていたんですが、甘かった……。
私の知れないところで、被害者が警察に訴えたって言うじゃないですか。
それからどうにかして、告訴こそは取り下げて示談にこぎつけたものの、世間からのバッシングにはかないませんでした。
馬鹿どもから自殺するとか戯けたことをすると脅されて、一生分の恥をかいたあの記者会見。
……それが精一杯でした。
あとはもう、やることをやったから、逃げる……。
もう、当時は、バッシングから逃れたい、奴らから逃れたい、その事しか頭になかったですよ。
もらうもんもらってからは後は悠々自適に過ごそうかと思いましたが、これもまた甘かったです」
174 名前:ごさく" ◆.DoLbGgHq2 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 22:58:33 ID:i5C/4+1W
「電話に限らず、FAX、メール、張り紙……そういった嫌がらせは朝から夜まで続くんです。
買った家が家として機能しませんでしたね……。
心休まる時がひとつもないんです。
そのせいで、自律神経失調症にもなりましたし、医者も私の名前を見るなりして、失笑されました。
今までもそうです。
ホテルに泊まるにせよ、アパートを借りるにせよ、いつまでも名前を見る度に、「レイ教の学長か、あなたに部屋を貸せませんって」
金を払っても、相手にされないんだ。
こんなことを繰り返されてはたまりませんから、もう、家を売って、名古屋、東京、博多とどんどんヤドカリ生活へと転落していきました。
おまけにこんなのもありましたな。
私が東京にいた時、私がいるというだけで、人だかりが寄っていって望んでもいないのに、「強姦魔擁護の学長」「学長失格」そう笑い者にされるんです。
……こんな生活をもう毎日毎日、続いています。
本当、あの頃に帰れるなら土下座をしてでも悪魔に魂を売ってでも、戻りたい。
もう、たくさんだ。
ふと、ネットカフェに泊まったときにインターネットに繋いで、自分で自分の名前を検索するときがあるんです。
今でも、わたしを探し出してリンチにかけようとする人間がいるそうですよ!
わたしは学生にも恨まれているんだ!」
どうでも良い、自己憐憫ばかり一方的に話す途中だった。
唐突に、神山の名前を叫ぶ品格の悪そう声が複数。
窓の外に一瞬、意識を向けていると、自分の飲んだコーヒーの代金も払わずに、絶叫を上げながら、ごさくの前から神山は逃亡する。
ごさくが気づいた頃には、遅かった。
五十代半ばだと思えない、逃げ足の速さで、ごさくが店から出た時には周囲には、臆病者の名前を叫んでいたであろう、柄の悪い連中が「神山はどこだ!!」
と、必死に捜索しているのが眼に映った。
「一番肝心なところを聞き逃すとは……!」
飲み逃げされたことよりも、本日掴めるはずだった「加害者もしくはその親と元学長の密接な関係」についての情報を取り逃がしたことによる痛恨の思いで胸中はいっぱいだった。
まだ、間に合うはず…!
そう思って、ごさくは駆けだした。
それから翌日のこと。
神山が県外へと逃亡したとの情報を掴んだごさくは、
「確かな情報は掴めなかったが、協力者がいる」と確信した。
175 名前:ごさく" ◆.DoLbGgHq2 [sage] 投稿日:2009/09/29(火) 23:00:32 ID:i5C/4+1W
十作目、完了。
あれ?
ノンフィクション風だったはずなのに、サスペンスになっていないか?
……うーん。
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