苦悩の連鎖
この作品はフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係がありません


【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 5
http://schiphol.2ch.net/test/read.cgi/aniki/1251558045/
421 名前:お伽草子 ◆NhDiiXmp8. [sage] 投稿日:2009/09/03(木) 22:50:00 ID:6BUmr5wV


第一話 磯村

ある日ジェンキンス教授が、ゼミの学生である磯村を呼んで言った。
「今度出版する冊子に挨拶を書いて下さる筈の先生が事故に逢われて書けなくなったの。このままだと白紙になってしまうから、何か書いてくれない?」
磯村は困った。大学生といっても勉強などしたことがない。どうやって断ればいいだろう。
しかし教授の次の言葉を聞き、考えが変わった。
「この原稿を書いてくれたら、特別に単位を与えましょう」
磯村には卒業するには足りない単位がある。
これで卒業出来るぜ。
磯村は教授から詳細を聞き、早速取り掛かった。
テーマは「女性について」である。
手初めに、身近の女性について書く事にする。

私の母は、いつも私を愛してくれます。
私の健康を考え、バランスの良い食事を作ります。
昨夜のオカズはサンマでした。
でも本当の事を言うと、サンマは好きではありません。小骨が喉に引っ掛かるからです。
母はよくサンマを出します。みんなの為、と言ってますが、安いからだと思います。

ここまで書いて、書く事がなくなったので、次は妹に移る。

妹は美人とは言えないけど、男友達はいっぱいいます。
俺に友達を紹介しろと言ったのですが、してくれません。

ここで行き詰まり、彼女に移る。

千里とは昨日も会いました。会えばいつもヤッてます。
千里が感じるのは胸です。特に左の乳首は、摘んだだけでイク時があります。

その後、対象を替え何人かについて書いたのだが、まだ四分の一にしかなっていない。
しかし磯村にはこれ以上書く事がない。どうしたらいいんだ。
その時、磯村は閃いた。
全部俺が書かなくてもいいじゃないか。後は誰かに書かせよう。俺は四分の一書いたから、あと三人に残りを書かせればいいんだ。
それから磯村は、メンバーの選考を始めた。


第二話 大久保

磯村から原稿を頼まれた大久保も、原稿用紙を前に困惑していた。
文才の無さにおいては、磯村とはいい勝負である。書こうとしても取っ掛かりすら掴めないのだ。
散々悩んだ揚句、大久保は迷案を思いついた。
改行を多くすれば良いのだ。それで行を稼ごう。そして登場人物を多くすれば良い。
構想を練り上げると、大久保は書き始めた。

僕は昨日、五人の女性とハイキングに行きました。
「名前は何ていうの?」
「ちさとです」
「なつみです」
「ゆかりです」
「まいこです」
「いくえです」
「好きな果物は?」
「りんごです」
「みかんです」
「ぶどうです」
「すいかです」
「いちごです」
「今日のお弁当は?」
「おにぎりです」
「サンドイッチです」
「のり巻きです」
「ホットドックです」
「焼きソバです」
「好きな色は?」
「青です」
「白です」
「緑です」
「黒です」
「紫です」

うひょー、これならいくらでも書けるぜ。
大久保はサラサラと書き進め、後輩の陽太に渡した。


第三話  陽太

陽太も途方に暮れた。
文才の無さに於いては、二人に勝るとも劣らない陽太である。
そして困り果てた陽太が取った作戦は、他の作品をパクるという方法だった。普段から平気で嘘をつく陽太であるから、罪悪感などない。
陽太は早速文豪と呼ばれる作家の本を数冊買い、ろくに読みもせず書き始めた。

私は肉である。
名前は陽太である。
趣味はスポーツである。
麻雀も好きである。
女ももちろん好きである。
でも本当は男が好きである。
私はその男の写真を三葉、みたことがある。
一葉は、その男の大学入学、とでも言うべきであろふか。
二十歳前かと推定される頃の写真であって、その青年が大勢の女のひとに取りかこまれ(それは、その青年の友人たち、恋人たち、情婦たちかと想像される)運動場のほとりに、青いユニフォームを着て立ち、醜く笑っている姿である。
或曇った冬の日暮れである。
私は京都発の電車の隅に腰を下ろして、ぼんやり発車のベルを待っていた。
その大いなるコネを持つ男は、悠々とした足取りで私の前に姿を現した。
おおコネ、あなたはどうしてそんなにコネがあるの?
そのコネの一欠けらでも、私にあればいいのに。
私には自信がある。
いつの日か、きっとこの男を落としてやるという自信である。

大久保に密かに想いを寄せていた陽太は、いつしか大久保について書いているのに気付かず、最後を原口に託した。


第四話 原口

陽太から原稿を押し付けられた原口は、何が何だか分からない。
何故自分がこれを書かなければならないのかも謎だし、何について書くのかすら知らない。
陽太は何も説明していないのである。
とにかく他の人が書いた原稿を見れば分かるだろうと、初めから読み始めた。
しかし、読み終わってもまだ分からない。
と、その時陽太の文章の中に「コネ」の文字を見つけた。
なるほど、そういうことか。
原口がコネ持ちなのは、学内では有名である。それで原口に白羽の矢が立ったのだろう。
合点がいった原口は、コネについて書き始めた。

我々はどこから生まれてきたか
それはコネから
我々はいかにして滅ぶか
それはコネなきため
我々は何によって自己に打ち勝つか
それはコネによって
長い間泣かずに済むのは何によるか
それはコネによる
我々を結ぶ付けるのは何か
コネである

コネに於いては自信がある原口は、延々とコネについて書き続けるのであった。

翌日、磯村は教授に原稿を渡した。
数日後刷り上がった冊子には白紙のままで、卒業式に磯村の姿はなかった。