帰り道

この物語は不完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件とは多分関係ございません


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185 名前:きのこ[sage] 投稿日:2009/09/30(水) 19:38:00 ID:qMaqikaz


   帰り道 壱

この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件とは全く関係ごさいません。

秋分を過ぎると陽も短くなり、定時にこの研修センターを出ても夕日が西の空を朱く染めている。
門から顔を覗かせ、左右を見渡す。
よし、今日はいない。だが、駅へ向かって歩き始めた途端、
「レイプマ~ン!」
「レイプマン!ヘイ!ヘイ!」
子供の甲高い声、いや、変声期を迎えた低い声も混じっている。
あの小学校の悪ガキ共だ。
九月から時折、研修センターに通うようになると帰り道にあの小学校の児童が付き纏うようになった。
最初のうちは、レイプマン教授、久呆先生だったのが今は単にレイプマン、酷いのになると名前を呼び捨てにしやがる。
当然、周りは訝しげな目を向ける。
最初のうちは逃げるように立ち去っていたのだが、ガキ共は余計に面白がって追い掛けてくるので今は好きにさせている。
追い払う?そんなこと出来る訳がない。
そんなことして父兄から突き上げれたら今度こそ終わりだ。
ただでさえ、僅か二ヶ月の教員勤務で研修センター送りになって本採用されるか微妙なのだ。
それがまた、何か問題を起こしたら本採用どころか、即クビに成り兼ねない。
ガキ共は自転車で俺の周りを囲むようにチンタラ走ってる。
時折、小馬鹿にしたように、レイプマンだの彰浩だのと声を掛けてくるが無視して歩を進める。
ガキ共の一人がローリングまがいのことをして近寄るので思わず、
「危ないぞ。」
と言うと他のガキが、
「そうやで、レイプマンはホモなんやから襲われるで。」
とほざきやがる。
他のガキ共も口々に囃し立てる。
思わず、俺はホられる方だと怒鳴りたくなったが辛うじて堪えていると、ガキの一人ガッシャーンと大きな音を立てて転倒した。
よそ見してて電柱にぶつかってやがる。
内心、ざまあみろと思いながら起こしてやろうと近づくと、
「レイプマンにやられたぁ。」
転倒したガキが大声で喚き立てる。
他のガキも口々に、
「レイプマンやめろや。」
と叫ぶ。
向かいの住宅のベランダから主婦が不審気に顔を覗かせている。
道行く人達も冷ややかな視線を送っている。
えっ、えっ~。俺、何もしてへんのに。
が、無意識のうちにその場から逃げるように走り去ってしまっていた。

    帰り道 弐

あぁ、またやってしまった。
面倒な事があると逃げてしまうんだよな。
六月のあのTV取材の時も思わず仮病で休んでしまってこのザマだ。
せめて学校の判断を仰いでいれば、こんなことには成らなかったかもしれないのに。
愚にもつかないことを考えて歩いていると、
「先生。」
と呼び掛けられ、思わず立ち止まってしまった。
振り返ると低学年、三年生だろうか、男子児童と後ろにその兄貴らしい悪ガキと友人達。
こちらは中学生だろうか。どうせ、ロクでもないこと企んでいるんだろう。が、児童に、
「久呆先生。」
と言われるとつい、
「ん、どうした。」
と言ってしまった。
すると児童は、
「とびたってどんなとこですかぁ、先生はどんなことしてたんですかぁ。」
言葉の意味も分からずに無垢な瞳で見詰める児童とニヤニヤと笑う悪ガキ共。こいつらが言わせたのか。
まあ、相手にすまい。
足早に立ち去ろうとすると背後から、
「先生、上が面白いことになってます。どうするんですかぁ。」
悪ガキ共が大きな声で問い掛けてくる。
先生、先生と連呼するから視線が俺に集まる。
気が付くとやはり逃げ出していた。

駅の改札口で教頭と学年主任に出会ったがおもいっきり無視された。
帰りの電車の中でもう辞めようかとつい思ってしまう。
しかし、いつも決断出来ずにいる。
まあ、教職にこだわるつもりもないけど、辞めろと言われてないのに辞めるのもなあ。
親戚のツテでいい勤め先あればまたその時に考えよう。