チュニック 哀 歌

この物語は完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件とは一切関係ございません


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雑談系2 [ガチホモ] “【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 2”
651 名前:ぶさ哀し チュニック哀歌1[] 投稿日:2009/08/09(日) 10:18:15 ID:536TkBxp



ぶさは、自分たち自治会に敵意を向けているであろう仮想敵どもに
「(ここは)監視しているので、そのおつもりで」と書き残した。
ぶさは満足であった。
自分の嚇し文句は彼らにとって脅威であろうと、幼稚で肥大した自我が
もたらす万能感に包まれていた。

ぶさは、根拠のない自信に満ち溢れていた。
自分が自治会役員に推挙されたのも、偏差値が高い高校から国立大学に合格した
自分の素晴らしさを見ぬいた同級生からの、畏敬の念ゆえであると思っていた。

学内でも、カルトの一派と認めるのが自治会であった。
誰しも、自分は異端者であるとは見なされたくないものだ。
ゆえに、ぶさの自治会への推薦は、垢抜けない不細工な田舎者への集団苛めで
あった事実に、彼女自身気付きもしなかった。


ある日のこと。
ぶさの地元行きつけであったニチイ、もといサティでお気に入りだった、チェックの
チュニック服を、おしゃれな店しまむらで偶然見つけた。
奨学金を受けていながら、学資に使うべきすべての金を携帯電話でのネット
通信費用と家庭教師殺人鬼物語に流用しているぶさにとって、サティで見つけた
チュニック、3990円也は高嶺の花であった。

ファスナーが壊れたその服は、しまむら安心価格500円で売られていた。
ぶさは狂喜した。
実家にいた時は、虎視眈々と、その妊産婦が着るようなだらしないシルエットの
服が値下がりするのを待ちうけていたのだ。

2990円、そして2490円。順調に服は値崩れしていった。
やっと1990円になるであろうと思った時、ぶさの前からチェック服は忽然と
消え去ったのだ。

ぶさは服が売り切れたのを知り、二日間寝込んだ。
決して軽くはない、己の重量感溢れる肉体を誤魔化すには、妊婦服と
見まごうばかりのあのだらしなく膨らんだ布がよかったのに。

たとえファスナーが完全破壊されていようが、安心価格に狂気乱舞した
ぶさは、即座に服を掴んでレジへと向かった。
愛しのきょーや様になけなしの金を注ぎ込んでしまったので、明日からは
ベビースターラーメンをかじる生活が続くことになる。
両親からの仕送りの食糧も尽きていた。それでも構わなかった。
そして、ぶさは毎日のように、そのお気に入りの服をまとい、颯爽と
自治会役員の会合へと向かうのであった。
ぶさについた渾名が、また一つ増えた。
「チェックメガネザル」
ぶさは、それが自分への皮肉であると理解できるだけの知能も持ち合わせて
いなかった。

彼女がほぼ毎日着たきりスズメであるのを見て、同級生ばかりでなく
先輩までもが哀れむような目で、また好奇の目で見るようになった。
やがて異臭を放つまでになったぶさに、一人の自治会の先輩が
見かねて忠告した。

「同志ぶさ。それは、バイオテロの一種なのであろうが、敵どもの前に
我々が非常にダメージを受けている。服を、服を洗濯すべきだ。そして
衣服にも事欠くような生活であるなら、救世軍に…」
言うが早いか、先輩は昏倒した。
ぶさは、洗濯機などという文明の利器を買わず、まず真っ先に家庭教師
殺し屋のためのグッズを買い込んだのだ。

この愚劣な娘は、自治会中に潜む反動分子の炙り出しに成功したとして
他の先輩から誉められた。
「だが同志ぶさよ。おまえの衣服は洗濯すべきである。その風体から
公安に注視されてしまうことは、想像に難くない」
さすがの先輩も「貴様は臭いのだ、この池沼め」とまではこの愚鈍な
新入生に言えなかったのである。

結局、ぶさは洗濯機を入手したのは、その数週間後であった。
ゴミ捨て場付近にあった二層式洗濯機を、先輩らとともに盗んできたのである。
それは占有物離脱横領罪に問われる犯罪行為なのであるが、警察権力に
逆らうことこそ誇りである彼女らには、容易い行為であった。
しかし、旧式の洗濯機を持ち運ぶ行為は貧弱な彼女らにとって重労働で
あった。
洗濯槽に洗濯物を入れたまま、立ち尽くしているぶさに呆れ、先輩が
一から二層式洗濯機の使用法を説明せねばならなかった。