三ドラよ~ん♪

これらの作品は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません

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730 名前:お伽草子 ◆NhDiiXmp8. [sage] 投稿日:2009/11/14(土) 00:07:13 ID:1jXOqG7S



昔々、あるところに三姉妹がおりました。
長女のブキと次女のブサは意地悪で、三女のクニはちょっとトロい大女でした。
三人とも大変なドラ娘でしたが、共通の悩みは彼氏がいない事でした。

「あーあ、どこかにカッコイイ男はいないものかしら」
「三丁目の八百屋さんの奥さんが家を出たそうだわよ。チャンスじゃないこと?お姉様」
「えっ!大ニュースじゃないのっ!さっそくアタックするのよっ!」
「でしょう?ウフッ」
「あら待って、三丁目の八百屋といったら『八百タツ』じゃないの。ダメよ、あのオヤジは変態だって噂よ」
「そうなの?」
「なんでも、毎晩××を××したり、××を××したりしてるらしいわ」
「えっ!まあ嫌らしい。それじゃ、お断りだわ」
「いい男って、なかなかいないわねぇ」
三姉妹は、毎日嘆いていたのでした。

さて、この国には王子様がいましたが、遊郭に毎晩出かけて女遊びをしていたので、いつもお金に困っていました。
それで回りからは「苦貧乏王子」と呼ばれていました。
「よおクビンボ、今晩は飛田に行こうぜ。最近は五条が続いたからな」
王子の御学友の磯村は、今日も王子を誘います。
「磯村、ダメだ。今月の小遣いを使い果たした。次の給料日までは、どこにも行けないな」
「なんだよー、ガッカリだなー」
「あーあ、何か上手い金儲けはないかなあ」
王子は金欠を嘆き、ため息をつきました。
「クビンボ、それならいい方法があるぜ」
磯村は、ポンと手を叩きました。
「コンパを開催するんだ。それで会費を集めようぜ」
「しかし、経費が掛かるからあんまり儲からんぞ」
「そこは上手くやるさ。会場はここを使えばいいだろ。料理は知り合いにパン屋の息子がいるから、安く仕入れるさ。あとはバンドでも呼べばいいだろ」
「おお!それならいいな。ちょうど今はパパが外国に出張中だから都合よい。どうせなら、若い女が集まるコンパにしようぜ。おまえ。さすがだな」
「だろ、へへへ。そうと決まったら、さっそく計画を立てようぜ」
二人は、案を練り始めました。

数日後、ブサがチラシを握り締めて部屋に飛び込んで来ました。
「お姉様、大変よ!出会い系コンパがあるわよっ!」
「なんですって!」
「これよ!今、電柱に貼ってあったから、剥がして来たわ」
ブサは、チラシを見せました。

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
夢のコンパ                      ┃
┃                             ┃
あなたに 理想の出会いを お届けします     ┃
┃                             ┃
参加条件:独身の男女               ┃
場所:城の大広間                  ┃
会費:男性…十万円・女性…一万円       ┃
┃                             ┃
豪華ディナーあり                  ┃
「疑惑のワルツ」の大ヒットでお馴染みの   ┃
ゴーカンズの生演奏があります         ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

「す、すごいわ。これこそが、私の求めているコンパだわ。絶対に参加しなくては」
ブキは、力強く頷きました。
「お姉様、行きましょう。そして理想の彼氏を見つけるのよ」
「あら、そのうえゴーカンズも来るのね。私、大ファンだわ」
ブキとブサが盛り上がっていると、クニも来ました。
「お姉様方、どうかなさったの?あら、これは?」
クニは、ブキが手にしているチラシを奪い取りました。
「んまっ!豪華ディナーですって!私も行くわ!」
「へん、あんたが行ったって相手にされないわよ」
「そうよ、恥をかくだけだわよ」
「ホホホ」
二人がクニを馬鹿にして笑っていると、母親が来ました。
「なんです、騒々しい。嫁入り前の娘がはしたない」
「あっ、お母様。素敵なコンパがあるのよ」
そう言って、チラシを渡しました。
「どれどれ、夢のコンパ?ふーむ、なになに…。えっ、すごいわ、どれ、私も行きましょう」
「えっ!お母様が!」
三姉妹は、あんぐりと口を開けました。
「そうですよ。私は今、未亡人で独身ですからね。参加資格はあります。いいですか、これから私を『お母様』と呼んではいけません。『ミス・ジェンキンス』と呼ぶのですよ」
こうして、一家総出でコンパに出かけることになりました。

コンパが近づくと、ブキとブサは不安になりました。
「お姉様、クニを連れて行ったら、私達が恥をかくわよ」
「そうよねぇ、結婚ともなると家族も見られるものねぇ。あんな妹がいると知られたら、まとまる話もまとまらないわ」
「どうしたらいいかしら」
「そうだ、いい考えがあるわ。クニのドレスを捨ててしまうのよ。あのサイズは簡単には手に入らないから、諦めるしかないわ」
「さすがね、お姉様。それでいきましょう。ホホホ」
意地悪な二人は、クニのドレスを暖炉に焼べて、燃やしてしまいました。

当日、クニが着替えようとすると、ドレスがありません。
「あら、ドレスがないわ。どうしたのかしら。お姉様、知らないかしら?」
「知らないわぁ。ちゃんと片付けないからよぉ」
「どうしたのかしらねぇ。ドレスが無ければ、コンパに行けないわねぇ」
クニは必死に探しましたが、もちろん見つかりません。
「ドレスは見つかったのかしら?ドレスが無いなら、コンパは諦めるのね」
「それじゃ、お留守番よろしくね。ホホホ」
「さあ、グズグズしてないで行きましょう。いい男、逃がさへんで!」
「まぁ、ミス・ジェンキンスったら、気合いが入っているわね」
三人は笑いさざめきながらコンパに向かい、クニだけが残りました。

「あぁ、もうコンパが始まっているわ。私も行きたかった…」
メソメソとクニが泣いていると、目の前におじいさんが現れました。
「これ、おクニさん、どうしたのぢゃな?」
「あっ、あなたは誰なの?」
クニはビックリして尋ねました。
「ワシは魔法使いぢゃ。おクニさん、なぜ泣いておるのぢゃ?」
「今晩、お城でコンパがあるのに、着て行くドレスが無くて行けないのです」
「なんだ、そんな事か。ではワシの魔法でドレスを出してしんぜよう」
「えっ、本当ですか。是非お願いしますっ」
「よし、では必要な物がある。まず牛肉1Kgとジャガ芋・玉葱・人参ぢゃ」
「はいっ!」
クニは台所を探し、おじいさんに言われた物を集めました。
「よしよし、ではいくぞ」
肉や野菜を確認したおじいさんは、クニに向かって杖を振ると、クニはたちまちドレス姿になりました。靴はガラス製です。
「まあ、ステキなドレス。それで、その野菜は馬車に変わるのかしら」
「いや、これはワシが家に帰って、カレーを作るのぢゃ。よいか、この魔法は12時に解けるから、それまでに帰るのぢゃ」
「はい、分かりました」
クニは大喜びで、お城に向かいました。

お城ではコンパが始まっています。
ブキとブサとミス・ジェンキンスは会場を物色しましたが、めぼしい男は見当たりません。そもそも男性の会費が高いので、圧倒的に女性が多いのです。
三人が諦め、豪華ディナー名目のコッペパンを食べ出した頃、ゴーカンズの演奏が始まりました。

疑惑のワルツ



追いコンの時に
後輩を 酔わせましょう
ダービーで つぶすまで
先輩づらで 脅かして

甘い嘘 そっと
「家に帰る」と 連れ出す
各自 役割 決めたなら
上手く いくはず




「クビンボ、作戦は大成功だな。女ばっかだぜ」
磯村は満足気に王子に言いました。
「まあな、だがカスばっかだぜ」
王子は浮かない顔です。
「文句言うなよ。会費だってかなり集まったぞ」
その時、巨漢の女が会場に飛び込み、いきなりテーブルの上にあったフランスパンを掴むと、ガブリとかぶりつきました。
「おい磯村、あれは誰だ!あれこそ俺のタイプだぜ」
磯村は驚きました。
「お、おい、クビンボはあんなのが…」
「あぁ、いいなぁ、あのヴォリュウム。飾らない食べっぷり。まるで人間ディスポーザーじゃないか」
「うう、むむむ」
磯村には言葉がありません。
「よし、俺は申し込むぞ」
王子はそう言うと、クニに近づき話し掛けました。
「お嬢さん、私と踊って頂けませんか」
「えっ、私と?ゲホッ、ゲホッ」
いきなり話し掛けられ、クニはパンを喉に詰まらせながら答えました。
「お嬢さん、ご趣味はなんですか?」
踊りながら王子は質問します。
「そうですわね。無芸大食かしら」
「特技はありますか?」
「私、自由に血液型を変えられますの。ホホホ」
「ほう、それは素晴らしい」
会話は弾み、瞬く間に時間が過ぎてしまいました。気がつくと、12時になるところです。
「あっ、やべ」
クニは慌てて帰ろうとしました。
「お嬢さん、待ってください。せめてお名前を」
「それどころじゃないわ」
挨拶もそこそこに、クニは走り出し、王子は追いかけます。
クニが走ったものだからたまりません。ガラスの靴はクニの巨漢に耐え兼ね、粉々に割れてしまいました。
「お嬢さん、お嬢さん」
王子の呼びかけも虚しく、クニは姿を消し、後にはガラスの破片だけが残りました。

「ああ、あの女性に逢いたい」
コンパが終わってから、王子はクニの事ばかり考えています。
隣では磯村が、コンパの収支を計算していました。
「おいクビンボ、スゲーぜ。なんだかんだで、かなり集まったぞ」
「磯村、俺はもう金なんてどうでもいいよ。真実の愛を見つけたんだ。あの人さえいれば、何も要らないよ」
「そうか、パン代は払ったから、あとはゴーカンズのギャラを払えば、残りは全部儲けだな」
「おい磯村、あの人に逢うには、どうしたらいいかな?」
王子は虚ろな眼差しで磯村に聞きました。
「そうだなぁ。ガラスを踏んだんだろうから、足に怪我をした人を探せばいいんじゃないか」
「そうだな!よし磯村、おまえ探してくれ」
「なんで俺なんだよ」
「おまえの父ちゃんがパパの部下だからだよ」
「クソ、仕方ねえ。じゃあ、手配しておくよ」
そう言うと、磯村は従者を呼び命じました。
「クビンボ、今使者を送ったから、じき見つかるさ」
「ああ、やっと逢える!」
王子は感動で涙を流しました。
その時、ノックの音がして男が部屋に入って来ました。
「おや、これはゴーカンズのマネージャーさん」
磯村は立ってマネージャーを迎え入れました。
「いや、この度はどうも。先日のギャラを戴きに上がりました」
「ちょうど良いところにいらした。今その話をしていたんですよ」
「では、こちらを」
マネージャーは、そう言いながら封筒に入った請求書を渡しました。
「えーっ!」
封筒を開け、磯村は仰天しました。かなり高額です。
「こ、これは何かの間違いでは?」
「何言ってるんですか。ゴーカンズは一流ですよ。このくらいは戴かないと」
「し、しかし…」
「あっ、ちゃんとあるじゃないですか」
マネージャーはテーブルの上にあるお金を見つけると、それを持って行ってしまいました。
「…。結局、無駄骨だったのか…」
磯村はガッカリしてへたり込みました。
その時、磯村の携帯が鳴りました。
「はい、もしもし…」
磯村が携帯を取ると、使者からの連絡です。
「なに!そうか!分かった」
通話が終わると、磯村は王子に向かって言いました。
「クビンボ、喜べ。あの女性が見つかって、今ここに連れて来るそうだ」
途端に王子の虚ろな目は、生き生きと輝きました。
「そうか!やったか!ええい、こうしてはおられん。さぁ、用意をしなければ。まずは風呂に入って来る」
そして、準備を始めました。

それより少し前、磯村から送られた使者は、ようやく三姉妹の家までたどり着きました。
ドアをノックすると、への字口の女性が現れました。
「あー、ちょっとお尋ねしますが、お宅は先日の夢のコンパに参加しましたか?」
使者が用件を伝えると、ブサは使者達を家に入れ、家族を集めました。
「それでは、皆さんの足を見せて頂きましょうか」
「どう?美しいでしょう?」
ブサは自慢気に足を使者の前に出しました。使者は、ブサの足を調べました。タコや魚の目はありますが、傷はありません。
使者は黙って首を横に振ります。
次にブキの足も調べましたが同様でした。
「さあ、お嬢さん、あなたの足も見せてください」
使者はクニに向かって言うと、クニは大きな足を使者の前に突き出しました。
「うーむ、やはり傷はないな」
使者は呟きます。
「傷ですって。私の足の皮は頑丈で、鋼鉄より固いのよ。怪我なんてした事ないんだから。ガッハッハッ」
クニは得意そうに笑いました。
「ここも違ったか」
諦めて使者が帰ろうとすると、引き止める声がします。
「待ちなさい。私を忘れていますよ」
ミス・ジェンキンスはそう言うと、足を出しました。ひび割れやアカギレで血が滲んでいます。
「おお、この足だ!見つけたぞ」
使者は興奮して叫びました。
「お母…いえミス・ジェンキンス、見初められたのね!」
「素晴らしいわ!」
「知り合いにウエディングプランナーがいるから、紹介するわ!」
みんな大騒ぎです。
「さあ、王子様がお待ちです。一緒に行きましょう」
こうして使者は、喜びのあまり呆然としているミス・ジェンキンスを連れ、王子の待つお城に向かうのでした。

おしまい