無礼Menの音楽隊

これらの作品は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


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654 名前:お伽草子 ◆NhDiiXmp8. [sage] 投稿日:2009/10/29(木) 18:43:14 ID:FRgMVc2F



あるところにしょぼい中年男がおりました。
中年男はリストラされていたので、毎日ハロワに通っていましたが、ある日ハロワで高待遇の求人カードを見つけました。
「なに!時給千円だと!850円のバイトはしたことがあるが…ウヒヒ、これはいいぞ。早速申し込むとするか」
中年男が窓口に行くと、係員は親切に教えてくれました。
「なになに『ブレーメン芸能(株)』か、ああ、ちょっと遠いんですよ。隣町だけど通勤は大丈夫かな」
「もちろんです!で、どんな仕事なんですかい?芸能てえと、やっぱ歌ったり踊ったりですかい?あっ!もしかして、ホ・ス・トってことは…。
いや、それならそれでもいいんですが、いや、むしろその方が…ウヒヒ、ウヒヒ」
中年男が一人で笑っていると、係員はムッとして言いました。
「あんた、ここはハロワですよ。そんないかがわしい仕事は紹介しません。まあ、健康面には問題なさそうだから、紹介状を書きましょう」
中年男は紹介状をもらい、隣町のブレーメン芸能(株)に向かいました。

歩き始めて、中年男は気付きました。
「しまった、さっき有り金叩いてカップラーメンを買ったんだった。電車賃がないか。仕方ない歩いて行くか。半日もあれば着くだろう」
中年男はトボトボと歩いていると、腰をプリプリ振った男が声を掛けました。
「あっ、先輩」
見ると、後輩のショー犬です。
(ちっ、嫌な奴に会ったな)
中年男はそう思いましたが、笑みを浮かべ言いました。
「おう、ショー犬か、どうしたんだ」
「やだなあ、トレーニングですよ。先輩こそ、どうしたんですか?」
「あ、いや、実は芸能プロにスカウトされてな。この先のブレーメン芸能(株)に行くところなんだ。今日は天気がいいから、散歩がてら歩いているんだ」
「えっ、スカウトすか、さっすが先輩すね」
「まあな、ウヒヒ」
「そうだ、俺も連れてってくださいよ。俺、まだNNTなんすよ。先輩の手伝いさせてくださいよ」
「あ、いや、それは…」
「いいじゃないすか。さあ、行きましょう」
ショー犬は強引について来るので断れなくなり、中年男は仕方なくショー犬と歩き出しました。

「しかし、さすが先輩すねー。先輩が芸能人になるなんて、鼻が高いすよ。そうだ、俺チェーンメールでみんなに知らせますよ」
「あ、いや、それは…」
「芸能界てえと、何やるんですか?」
「いや、まあ、その…」
「歌すか、そういや先輩よく作詞してましたねー。やっぱ、自分で作った曲を歌うんすか?シンガーソングライターってやつすか?」
「それはその、まあ、何というか…」
「あと、踊ったりもすんすか?」
「なに!踊りですって!」
その時、黒縁メガネの貧相な女が飛び出して来ました。
「踊りときいちゃ、黙ってられないわ!」
すごい剣幕です。
「あっ、こいつ雲猫だ。先輩、この界隈じゃあ有名すよ」
ショー犬は女を見て言いました。
「ホッホッホッ、まあ、そんなに有名なの?ま、当然かしら」
雲猫は嬉しそうです。
「ところで踊りとは何なのかしら?私も参加したいものだわね」
「ヘッ、お前なんかお呼びじゃないよ。こちらにおわす方をどなたと心得る。スカウトされて芸能界入りする、未来の大スター様だぞ」
「あの、それは…」
中年男は、話がだんだん大きくなるので、気が気ではありません。
「芸能界ですって!それは聞き捨てならないわ!それなら私も行かなくちゃ。そうね、あなたは服のセンスがイマイチだわね。そのハーパンは頂けないわ。そうだわ、私があなたの専属スタイリストになってあげる。さあ、行きましょう」
雲猫は、強引に仲間に加わりました。

楽しそうな雲猫と対称的に、二人の足取りは重く表情も冴えません。
「先輩、どうすんすか?こいつは回りの迷惑を考えないヤツっすよ」
「仕方あるまい、勝手について来るんだから」
二人はぼやいてばかりいます。
「あーあ、あの時芸能界なんて言わなければなあ」
「仕方ない、それを言っても後の祭りだ」
「なに!祭だと!」
今度は、一羽の鶏が現れました。
「祭と聞いちゃ、じっとしていられねぇ。俺様は祭には目がないんだ」
鶏は興奮して、羽をバタバタすると、虱が飛び散りました。
「うっ、くせーな。風呂に入ってるのか?」
「そんなのはどうでもいい。それより、祭会場はどこだ?」
「祭なんてねーよ。俺達は隣町に行くとこだよ」
「そうよ、私達は芸能界入りするのよ」
雲猫が、しゃしゃり出て来ました。
「芸能界!するとアイドルにも会えるのか!」
鶏の目の色が変わりました。
「そうよ、羨ましいでしょう。ホホホ」
「あっ、余計なことを言うな」
中年男は慌てて止めましたが、間に合いません。
「それなら、是非私も連れて行ってください。付き人でも何でも致します。お願いします」
「あぁ…」
中年男は虱付きの鶏まで連れて行くことになりました。

道草ばかりくっていたので、隣町に着く前に日が暮れてしまいました。
「先輩、今日はもう無理っすよ。どこかに泊まりましょうよ」
ショー犬が提案しました。
泊まるといっても一文無しの中年男はギクッとしました。
「あー、いやー、しかしこの辺りには宿屋はないようだな」
「それなら任せてください!」
鶏が張り切って言いました。
「自慢じゃないけど、ダテに自宅警備はしてませんよ。勘で分かります。そら、あの家」
鶏はそう言うと、一件の家を指差しました。
「あの家は、明かりが点いていないでしょう。あそこは留守です。今日はあそこに泊まりましょう」
「そ、それは家宅侵入なのでは…」
「いいから、いいから」
鶏は尻込みする中年男を押し切り、空き家に向かいました。
鶏が落ちていた針金を鍵穴に差し込むと、ドアは簡単に開きました。
家の中は真っ暗です。スイッチの場所が分からないので、一行は手探りで進みました。
グニュ
その時、中年男は何か柔らかいものを踏みました。
「ギエッ!」
不気味な声も聞こえました。
「な、なんだ?」
みんなビックリして暗闇に目を凝らして見ると、蠢くものがあります。
「いてて、お前らは何者ぢゃ」
それは、尻を踏まれて痛がっているおじいさんでした。
「なんだ、人が居るじゃねーか。お前の勘は当てにならねーな」
ショー犬は鶏を責めます。
「あれ?おかしいな。普通は暗くなると電灯を点けるんだけどな」
鶏は必死で弁解しました。
「そうだよ。ジィさん、なんで電気点けないんだよ」
「それは、電気を止められ…、あ、いや省エネぢゃ。地球温暖化は深刻な問題ぢゃからの。それより、お前達は何者ぢゃ」
「あいや、実は隣町へ行く途中なんですがね、日が暮れたもんで、泊めて頂きたいなぁなんてね」
「先輩は、隣町の芸能プロに行くところなんすよ」
「ジィさん、この人はスゴい人なんだよ。実は大スターなんだから」
雲猫が、どんどん話を大きくします。
「ほほう、大スターとな。それでは管理が大変ぢゃ。マネージャーはおるのかな?」
「あ、いや、それは…」
「そうかそうか、それならワシが引き受けてしんぜよう。ワシはな、この前まで管理職だったのぢゃ。マネージメントには、ちと詳しいのでな」
「先輩、それがいいすよ。芸能界はコワいすから。ジィさん、頼みますよ」
ショー犬は勝手に決めてしまいました。

翌日、一行は隣町の汚いビルに着きました。看板には「ブレーメン芸能(株)」と書いてあります。
「先輩、ここっすね」
「やれやれ、やっと着いたか」
「さあ、入るのぢゃ」
中年男を先頭に、中に入りました。
「いらっしゃい」
奥から恰幅の良い男性が現れました。どうも、この人が社長さんのようです。
「あっ、どうも」
中年男は、社長に紹介状を渡しました。
「フムフム」
社長は紹介状に目を通すと、中年男の全身を舐めるように眺めて言いました。
「よす、合格」
「ヘッ!」
あまりの呆気なさに、中年男の方がビックリです。
「ほ、本当ですか」
「なんだべ、働きたいんだべ?」
「もちろんです。よろしくお願いします!」
「んで、そっちにいるのも応募者だべか?」
「いや~、あれはスタッフというか、裏方希望で…」
「なんだべ、みんないい味出してんなー、おめさんらもやってみるけ?」
社長は後ろに屯していたショー犬達に聞きました。
「えっ、それはもう」
「やはり、見る目があるわね、ホホホ」
「いや~、この歳でステージに立つのは照れるのう。ヘラヘラ」
みんな、かなり乗り気です。
「んでは、グループにすっぺ。名前は『スピパラ』でどうだべ」
「なに!スピパラ!スピリチュアル パラダイスの略ですか!素晴らしい!」
中年男は感動しています。
「うんにゃ、スピシャル パラサイトだ」
「スピシャル?それはスペシャルでは?」
「んだ、スピシャルな」
「はぁ、それは…」
「それより、早く着替えてけろ。衣装は用意してあっから」
社長から渡された衣装に各々が着替えました。
衣装はかなり奇妙奇天烈で、下品た着物やら、戦国時代のポルトガル人風やら、サーカスにでも出られる雰囲気です。
「いや、これはなかなか奇抜ですな」
「芸能界ぢゃ。奇を衒わねばな」
「さあ、着替えたら集まってけろ」
社長が呼びました。


「んでは、これから営業に行ってもらうべか」
「はいっ!」
全員、元気に答えました。
「まず、これを首から下げて…と」
社長はそう言うと、中年男の背中に看板をぶら下げました。看板には『日の出スーパー』と書いてあります。
そして、それぞれに太鼓や笛を渡しました。
「これで街中を回って来てけろ」
「も、もしやこれはチンドン屋というやつでは?」
「おめさん、今はチンドン屋なんて言わねんだ、ヒューマンパブリックと呼んでけろ」
「はあ、そうですか」
「いや~よかった。あとはサンドイッチマンを探して…と。おめさんらの知り合いに、誰かいないべか?」
社長が問い掛けると、ショー犬が手を挙げました。
「います。パンが大好きだから、ピッタリだと思います。それにマスコミにもコネがあると言ってました」
「いいね~、紹介してけろ」
「分かりました。今晩メールしときます」
「さあ、んでは、みんな張り切って頼むずら」
スピパラのメンバーは、通りに出て営業を始めました。





踊るレイプマン


チキンもセカレもみんな
踊りを踊っているよ
毎回 おんなじ パターン
インチキ理論が登場

いつだって 変わらない
強姦は 悪いこと
そんなの常識 たったそれだけ

ピーヒャラ ピーヒャラ
踊る レイプマン
ピーヒャラ ピーヒャラ
踊る 見張り役
ピーヒャラピー
今夜も登場



チンドン屋と言っても、元々は注目されるのが大好きな人ばかりです。
スピパラもサンドイッチマンも、毎日歌って踊って、幸せに暮らしましたとさ。めでたし、めでたし。

おしまい