色 不 異 空

この物語は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


【集団強姦】京都教育大 44回生【示談・隠蔽】
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/student/1251659393/
41 名前:色不異空① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/08/30(日) 23:45:24 ID:RLBoXKxZ


鏡の前に座り、浅黒い肌に伸ばした後に、念入りに丹念に白目のファンデーションを塗りこんでいく。
吉川実希の朝は、毎日、儀式とも言えるこの作業から始まる。
色黒なのに白い厚塗りをしているので、首から上だけが白く浮きあげるという不自然な出来映えなのだが、
実希は気にも留めてはいない。
日本人にしては濃すぎる顔立ちをさらに際立たせるべく、アイラインを黒でくっきりと入れる。
はっきりとした顔ならば、下手に強調せずにむしろ柔らかくぼかした方が、異性受けはいいはずなのに、
実希はそれにも気がつかない。
化粧をすればするだけ美しくなれると信じ込んでしまっている。
それは、文章は丁寧にすればするほど美しくなると思い込み、やたらとセンテンスが長く読み難い、
それでいて意味の通じない駄文を書きまくることに似ている。

つまり、客観的視点とセンス、
この二つが丸っきり存在しないことが、実希の言動の全てを滑稽なものにしているのだった。

ドレッサーの脇にある花瓶の水を代える。これも朝の儀式のひとつである。
実希は美しいものが好きだった。豪華なバラの花束・着物の絢爛な模様。それらは実希に優越感という快感を与えてくれる。
美しいものを側に置くことで、自分も美しいものの一部になったような錯角に陥るのだ。
・・たった一つ美しい女を除いては。

実希の耳に美しい後輩の話が入ってきたのは、半年ほど前のことだった。

実希すでに大学を卒業しており、世間でいうところのフリーターをしていた。
ブライダルコーティネーターという耳障りのよいカタカナ職業の使い走りの仕事と、
ごく偶に大学の専攻を活かした講師のバイトと。何もかもが中途半端な人生。
美しく生きることがポリシーなのであれば、一生を賭けられる仕事に向かって血の滲むような努力をし、
自身が輝けるようになるべきであるのだが、
「人に自慢げに言えるか言えないか」を職業選択の重視すべきポイントと考えているので、
この浅はかな女は、自分の人生を本当の意味で美しくるための地道な努力はすることもなかった。

大学時代の男の後輩たちから、美しい新入生の評判を聞くのは、実希にとっては拷問以外のなにものでもない。
凄まじいまでの美への執着とコンプレックス。笑顔で話を聞いてはいても、心中は穏やかなものではなかった。
美しくない自分。正規雇用すら獲得できない自分。
それに比べて、これから学生生活を過ごす希望ある新入生。たくさんの男子学生に囲まれる美しい女。
実希の焼け付くような嫉妬心は身体全体に広がっていった。

とある午後のこと。実希がnixiにログインすると、後輩からメッセージが入っていた。
「この前お話した俺のお気に入りの後輩の部屋に空き巣が入って、10万円の被害がでたみたいです。
怖い世の中ですね。大学のコミュの方で『寮内で空き巣被害発生』というトピがあるので覗いてみて下さい」
実希は心が躍るのがわかった。美しい女が被害が遭うのは実希にとって、最上の喜びなのである。
早速トピを見るとみな同様にねぎらいの言葉をかけている。実希はそれがどうしようもなく気に食わなかった。
ふと目をやると、防犯について書いてあるレスを見付けた。
実希は、それを見てにんまりとした。そして思いの丈をレスにする。
「私は、ここの卒業生ですが、私の在学中には空き巣の被害に遭う人はいませんでした。
一人一人が防犯の意識を持ち、例え寮の中であろうと気をひきしめ学生生活を送り、毅然とした態度で臨んでいたものです。
被害に遭った方はお気の毒に思いますが、犯罪に対しての防犯意識が少なかったのではないかと、甘えの気持ちがあったのではないかと
・・そして犯人が学内にいるのではないかということですが、それはこの被害者の方が被害者意識を強く訴えていることで、
学内に強盗などという犯罪者が存在するという結果になってしまってる・・私はとても厳しい言い方ですが、
あえて、この被害者の方の防犯への意識の薄さを指摘したいと思います」実希は体裁的に被害者を気の毒に思うと書いたが、
同情の念など少しもなかった。なんの落ち度もない被害者の非を書き込むことで、自分の嫉妬の気持ちを発散させているだけだった。

翌日トピを、覗いてみると、明らかに被害者に非のない事件ということもあり、実希への反論のレスがあった。
実希は全身が熱くなるのを感じた。
そこで、「この被害者さんの評判というものはどうなのでしょうか。
まずきちんと戸締りをしない女性というのがとてもひっかかっているのですが、
普段から彼女の生活態度はそういうものだったのか、
誰が入ってくるかもしれない部屋であるのに鍵を閉めないで外出しているというところに疑問を持ちますし、私には到底理解ができない行為です。
恋人がいて誰かを部屋に呼ぶ習慣があったのではないかとも考えられます」と書き込んだ。

幸せや美といった概念的なものは、決して椅子取りゲームではない。
誰かが幸せになったからといって、誰かが美しかったからといって、自分の取り分がなくなるというわけでもないのに、
愚鈍な実希は常に「他人がそれを持っていたら、自分には回って来ないのではないのか」という強い妄想を抱いてしまう。

未希は、見も知らぬ美しい後輩が追い込まれるように、苦しむように、毎晩毎晩長文で攻撃をした。

そしてとうとう
「彼女は・・夜は鍵をかけないで寝る習慣があったようなのですが、
私の後輩から聞いたところ、複数の男性が出入りしていたと・・そういった女性が空き巣の被害にあったところで、
同情の余地があるのかと、疑問に思ってしまいます」と虚偽の書き込みをした。

このレスが発端で空き巣の被害にあっただけの新入生は、噂に苦しみ、とうとう休学までしてしまったという。

実希はいつものようにドレッサーの前に座った。
鏡の前の自分はとても美しい。そしてとても幸せだ。

にんまりと微笑むと5倍の量のファンデーションを顔に塗りこんでいった。