あるプロジェクトマネージャの恍惚

この物語は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 4
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341 名前:あるプロジェクトマネージャの恍惚① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/08/22(土) 00:15:44 ID:gRgQevsw


「ですから、自社端末のデータを落とし込んでですね、日計表を作成したいわけなんですよ。
貸方表示のカラムが8桁でどうするつもりなんですか?!勘定科目コードは10桁あるんですよ」
ふんっ、派遣のクセに偉そうに。心の中で思うのだが、僕は口にしない。
コミュニケーションを学んだ僕からすれば、こんな派遣女子社員の苛立ちなど、
ものの数秒で納めてしまえるはずだ。
まず、穏やかに笑顔を作って、一呼吸ついて話はじめる。
「それは、後ほど考慮します」
「考慮するって、納期は一週間後ですよ!他にも在庫管理システムにバグがあってですね
・・聞いてるんですか?どうするんですか?あの時何度もこれでいいか確認したのに、
これでいいとおっしゃったのは部長じゃないですか!!!!」
「問題点を全て挙げてください」・・相手が怒っているときには、吐き出させてしまうのも常套手段であると学んだ。
「一昨日申し上げました!部長の机の上に問題点を箇条書きにして渡しました!!本当にどうするんですか?!
あと一週間しかないんですよ?山中君はもう2日も家に帰っていません。私も毎日終電で帰っています。
体力的にも限界を感じるんですが!部長!部長は何を考えていらっしゃるのですか?」
この派遣社員には、コミュニケーション術が効かへんな。頭がいかれてるんやろか。
「・・だから後で考えて指示すると」・・相手がまだ怒っているときには、一端話を打ち切り、期を見て話すようにとも習った。

「お話になりませんね!!!」もの凄い勢いで社長室に駆け込む女子社員を傍目に、僕はのんびりとパソコンに向かう。
社内のネットワークのアドミニストレーターは僕なので、会社でネットは見放題なのだ。
会計も在庫管理もまるでわからない僕に無理難題を押し付けてくるほうが間違っていると思う。
大体、貸方ってなんや?8桁あって間に合わないなんて。仕事は下のもんがすればいい。
僕は管理職。部下のモチベーションを上げたり、チームワークを整えるのが仕事だ。
「おっ、山順さん、新車購入か」ネットでブログ回りをしていると、車が趣味のブロガーさんの報告があった。
お祝いのコメントを書かなくては。
「尾町くん、ちょっと」社長が呼んでいる。せっかくコメントを半分書いたのに。
僕は笑顔を作りつつ社長室に入った。
「京レ興行さんの依頼、あれ、どうなってる?納期は来週だと聞いているが」社長が珍しく渋い顔をしている。
「それなら、川田君と山中君に任せてありますが」
「おいおい、君はプロジェクトマネージャなんだよ、しっかりしてくれないと困るよ。
さっき川田君から報告があった。山中君はもう2日徹夜で作業してるという話じゃないか。君は毎日何をしてるのかね?」

「・・・」自分の主張をするときは、意図を明確にする必要がある。コミュニケーション術にはそうある。
だが、今の僕にはなんの主張もあらへん。
「君は毎日定時に帰って何をしてるんだ?」社長が質問を変えてきた。
「自己啓発セミナーと情報収集のためにインターネットです」鮮やかにはっきりと僕は答える。
主張をするときは胸を張って、というのもセミナーの教えである。
「・・君ね、今がどんな時かわかっているのか・・・・・・・・・・」社長の声が小さくなる。
今だ、と僕は思った。声が小さくなるということは、相手は意見に自信が持てないということだ。
「僕はよりよい組織作りのために、セミナーに通ってコーチングやリーダーシップ論を学んでいます!
チームワークがよければ、社員一人ひとりのモチベーションが上がり、生産性を高めることもできるんですよ」
僕の返事を聞いて社長はがっくりと肩を落とした。
・・ヤッター、僕は思った。相手は僕の素晴らしいコミュニケーション術に感服している。
「君、明日から自宅待機してもらえないか。給料は6割だけど払う。君の給料の4割で派遣社員に来てもらうことにする」
社長の思わぬ申し出に僕はびっくりした。

これが引き寄せの法則か。会社で働く時間があったら、もっともっとセミナーに参加したり、
スピリチュアルのことを学んだり、詩を書いたり、音楽を聴いていたいとかねがね思っていたところだ。
「ありがとうございます!」僕は運命を信じていてよかったと思った。

それから半年後、僕はこの会社を正式に解雇されてしまった。
だが、全然気にしていない。僕にはセミナーで学んだコミュニケーション術がある。
運命の法則を信じていれば、きっとよりよい職場にめぐり合えるはずだ。

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