キノコ様とおれ  2               腐女子先生
これらの作品は完全なるフィクションであり、実在する人物・団体には一切関係ありません


【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 6
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25 名前:キノコ様とおれ第二話① ◆jbk/fGtpkA [sage] 投稿日:2009/09/11(金) 00:30:22 ID:DTchN/dW


「フィリップ、マリアンヌ、ほらご飯だよー」
庭園の一番端にある池で、亀に餌をやることがおれの一番大切な仕事になった。
ニートのおれが拉致られるようにして、ここに連れて来られて5日が過ぎようとしている。
初日には馬の世話とか、キノコの小間使いとか、他にもいろいろと仕事があると言われていたけど、
にっくきキノコの靴にブラシをかけていたら、恨みの念が入りすぎて傷をつけてしまったし、
馬に直接ニンジンを食わせていたら、執事らしき偉い人が飛んできて、おまえはもういいと怒られた。
そんなこんなでとりあえず、この小さな池がおれの仕事場になっている。
このデカい館には他にも錦鯉の池などがあるようだが、その池は専門の人がケアしてるらしい。
実家にいる頃は、夜通しネットやゲームで遊んで、日が昇ると寝る生活だったから、
2,3日は朝早く起きるのが辛かったけれど、昨日ぐらいからは少し慣れてきた。
キノコに迫れられたあの夜から、おれは極力ヤツとは顔を合わさないようにしている。
ヤツが帰宅すると、使用人が一斉に玄関に出向くから気配でわかる。
「おかえりなさい、お坊ちゃま」と広間に並んで挨拶をするのが嫌で、必ずどこかに隠れている。
それにしても、この家では亀にまでヘンテコな名前がついている。アホみたいなカタカナの名前だ。
一通り教えてもらったけど、顔が全部同じだから、適当に呼んでいる。
館の端っこにある、ちっぽけなおれの池。
でも、バイトもしたことがなかったおれは、初めて仕事を任されたことが嬉しかった。
虫取りの網のようなものが付いた長い竿で、池を掃除する。木の枝とか葉っぱとかが取れる。
池がキレイになると、気のせいか亀が喜んでいる気がする。

キノコが帰ってくる前に飯を食っちまわないと。
初日は歓迎の晩餐だったけど、普段おれは他の使用人と一緒に、使用人用の食事をとる。
ただ、キノコの野郎の帰宅が早いと「エノキ~、一緒に飯食おう」と呼ばれてしまう。
とっとと済ませて風呂に入って寝なければ。
初日に抱くとか言って、せまってきたキノコの顔が浮かんで、嫌な気持ちになる。
おれはホモにされるところだったんだ!耳に息なんか吹きかけやがってあの野郎!!
くつじょくだ。漢字はわからないが、とにかく、くつじょくだ。
長い長い廊下を走り、一目散に食堂へ向かう。・・どうか間に合いますように!
セルフサービスでプレートに何品か適当にのせて席に座ると、魔の館内放送が聞こえて来た!
「キノコ様のご帰宅です、一同広間に集合するように」
・・飯まで邪魔しやがって!おぼえてろよ、薄らボケ!馬に蹴られて寝込め。不能になれ!
おれは飯をあきらめることにした。キノコの顔は絶対に絶対に1秒たりとも見たくねえ。
今日はオムライスだった。好きなのに、大好きなのに、一日働いて腹減ってるのに。
・・でも早く隠れなきゃ!オムライスに手をつけず、そのまま逃げ出した。

なんとか今日も一日キノコの野郎に会わずに済んだ。おれはベッドの中でほっとため息をついた。
一日がんばって働いたら、すぐに眠くなる。
家にいた時は寝たいときに寝ていたから、眠れることの有難さなんてわかりもしなかった。
あぁ~、幸せだな。ベッドの中で、キノコから逃げられたことと、これから眠れることに感謝した。

「・・おい、エノキ」
俺の安眠を遮るように、暗い部屋でいきなり聞こえてきた低音の声にギョッとする。なんだ?なんだ?
目を凝らすと、戸口のところでキノコが腕を組んでニヤニヤしている。
おれは・・おれは・・またせまれられてしまうのか?これはホモへの誘いか?
頭の中で「ホモ!ホモ!ホモ!」の活字が踊っている。・・かあちゃん、おれ、おれもうダメかも。
「エノキ?起きただろう?出かけるぞ。緊急の用事だ」
セックルじゃないのか?ホモ命令じゃないのか?
「とにかく、着替えろ。出来るだけ暗い色の服を着ろ」
・・とりあえず、服を脱げとは言われていない。ほっとした。
今何時だよ?ベッドヘッドのところの時計を見ると12時だった。・・ふざけるな、この野郎!
「・・ねぼけてるのか?かわいいな、着替え手伝ってやろうか?」
キノコが近づいてきたので、おれはベッドから飛び降りて急いで着替えをした。

屋敷の外の庭には、でかいコンテナを積んだトラックがあった。使用人はいない。
おれとキノコ二人きりだ。・・まさか、こん中で変なことしようと企んでるんじゃねえよな?
一抹の不安がよぎる。こいつは筋金入りの変態だから注意しなきゃいけない。
二人で無言でドライブすること2時間。キノコは何もない暗い空き地に車を留めた。
「おまえはこれを持ってろ」スプレー缶を渡される。
キノコがコンテナを開けるとコンテナ中から出てきたのはなんと、馬だった。
こないだの白馬とは違う黒毛の馬。
「いいか、よく聞け。おまえはこれからある家の壁にこのスプレー缶で文字を書くんだ」
おれがきょとんとしていると、キノコが話を続ける。
「『集団強姦見張り役B』と・・書けるか?」
バカにすんなよ、おれだってそのぐらいの漢字は知ってる。
黙ってうなずくと、キノコがおれを馬の後ろに乗せて、すごいスピードで走らせる。
しがみつくしかなくて、仕方なくキノコのウエストに抱きつくおれ。・・あぁ、なんでこんなことに。
大きな家の前に着くと、「とにかく急げよ!」とキノコが小声で言って、オレを前に乗せる。
きのこにベルトを掴まれながら、「集」の字をなんとか書き終えた。次の文字のスペースで馬が止まる。
体を前のめりにして、赤いスプレーで次々と文字を書いていく。
「B」の字を書き終えると、キノコは「お疲れさん」とだけ言って、おれの頭をなでた。

館の前にトラックが止まったので、急いで部屋に戻ろうとすると、
「おまえ、手が真っ赤だな」とキノコが余計なことを言ってきた。
両手を見ると確かにスプレーがついている。でも、いい。おれはキノコと一緒にいたくない。
「風呂入るか?俺もこれからだから」
・・こいつ、今なんて言った?「俺もこれからだから、風呂に入るか?」と言ったのか?
「男同士だろ?・・それともおまえなんか期待してんのか?」
無言でうつむいているオレに、笑いを含んだ声でキノコが言う。
・・そうだ、男同士だ。意識してどうする?キノコなんかに弱みを見せてたまるか!
「入る」とだけ言うと、キノコの後に続いて浴室に行った。

・・頼む、頼む、頼む、頼む、頼む・・隠して。おれは心の中で何回もお願いした。
風呂椅子におれを座らせて、ソープで洗ってくれているのはいいが、キノコはアノ部分を隠さない!
・・大人なんだな、こいつは。・・・・・自分のモノと比較して、なんだかメゲそうになる。
「やっぱりスプレーは落ちないな。明日誰かに落としてもらうといい。俺から執事長に言っておく」
ようやくキノコの手洗いから開放されたおれは、恥ずかしくて悔しいので、急いで湯船に入った。
キモいことに、キノコも入ってきた。・・早く出よう。同じ湯に浸かっていると変態が伝染りそうだ。
「今日の馬、かっこいいだろ。ダニエルっていうんだ」キノコが話し出す。
「月毛もいいけど、色的に目立つからな。黒鹿毛の方が闇に紛れる」
あぁ、そうだ。おれは今日こいつに犯罪行為をさせられたんだ。
「あれは、犯罪じゃないのかよ?金持ちだから逮捕されないのかよ!」
俺は思っていることを口にしてみた。
「逮捕か?」キノコが笑った。
「あそこは集団強姦事件の見張り役の家だ。あいつは、大学では訓告処分になっているはずだ。
本来ならその処分のことを履歴書に書く義務がある。その義務を怠って公務員になっているのに、
被害届を出せるんか?どの面下げて見張り役Bと書かれましたと警察に言うんやろ?」
・・あの事件か。おれは初日にキノコに見せられた事件を思い出した。
「それにな、『証拠がなければ、嘘ついちゃいます』と言っているのはあいつらや」
キノコが声をたてて笑った。タオルで作った風船をブクブクさせながら萎めてる。
「先でるで」キノコが、浴槽から立ち上がる。オレはもう少し湯に入っていたい気分だった。

この間までただのニートだったおれが、ものすごい大役を果たしたような気がした。
あの事件は、大学側が隠蔽した疑いがあって、犯人達は大学すら退学になっていない。
被害者は半ば泣き寝入りだ。そして今も犯罪被害者への誹謗中傷は収まらない。
その被害者への中傷も組織的にやっているような疑惑のある事件だ。
悪いことをして、罰も食らわないで、笑ってるヤツがいるから、キノコは犯罪じみたことをしたんだろうか?
おれも、少しでも誰かの役に立てたんだろうか?
引きこもりで、ネットとゲーム以外は何もしていなかった廃人。
クズのような、いや、クズそのものの社会のゴミだったおれ。
そんなおれでも、亀は餌をくれと寄ってくるし、スプレーで字は書ける。

なんだか、急にいろんなことが変わり始めて、風呂で一人ぼんやりと湯気を見ていた。








注)スプレーで他人の家に字を書くことは犯罪行為です。よいこのみなさんは真似しないでね。