無題:羊をめぐる世界の終わりの森を聴け風(仮) 

この物語は不完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件とは多分関係ございません


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雑談系2 [ガチホモ] “【お肉壺】QB師匠の窪みを語るスレ【股間が竹の子】 3”
77 名前:1/2[sage] 投稿日:2009/08/11(火) 19:57:13 ID:JSSQakyF


僕はいつものようにパソコンの電源を入れ、
いつものように2ちゃんねるという掲示板を開いた。
そこでは僕の大学への敵意をむき出しにした人達がいろんな推理を披露していた。
いつものように僕は冷蔵庫からビールを取り出すと、一気に飲み干した。
OK、認めよう。僕もこの大学の一員だと。

             *

この大学の学生にとって完璧な就活などといったものは存在しない。
完璧な絶望が存在しないようにね。
一応面接までたどり着くことができる。でも、ただそれだけだ。

             *

浅い眠りから覚めると、まだ夜は明けていなかった。
まだ頭が少し痛む。そう、昨日からずっと風邪で寝込んでいたのだ。
おとなしくベッドの中で本を読んで過ごすことにする。
西村寿行の「鬼女哀し」。あさま山荘事件での女闘士を描いた小説だ。
あまりこういうときに読むべき本ではないのかも知れない。

外はずっと嵐だった。
時折、ベッドから抜け出して、2ちゃんねるにアクセスした。
どうでもいいことがどうでもいい人達によって語られつづけている。
全くおめでたい。

鉄道板のスレを探し出すと、僕もどうでもいいレスをつけた。

電話のベルが鳴り出したとき、僕は一人で小説の続きを読みながら
ビールをちびりちびりと飲んでいた。

「今から会えない?」

彼女は唐突にそういうと、電話を切ってしまった。
僕は今日は一人でゆっくりと休日を楽しむつもりで、午前中にチャコルマートで
シャキっとしたトマトと新鮮ないわしとステキな赤ワインを買ってきていたのだ。
僕の人生はいつも誰かの意思に支配されている。
僕はため息をつくと、彼女のためにスパゲッティをゆで始めた。
彼女はひどく大食いなのだ。
僕の後ろではYouTubeから80年代の哀しげな歌謡曲が流れていた。

   *

「ちょっとひどいって思わない?」

突然彼女は話し始めた。
それまで僕はぼんやりと久呆とクニがセックスすることがありえるかどうかについて考えていたので
彼女が言ってるのがどのスレッドのことだかわからなかった。
何しろ関連スレッドは50を超えているのだ。

「不当な圧迫面接を受けたのに、逃げ帰ったっていうのよ」

そういえば彼女は就職板のスレッドが荒れている時は機嫌が悪かった。
何人もの学生が2ちゃんねるの一住人によって面接を落とされているそうだ。
その投稿を読んだ彼女が、ずいぶんとひどく怒っていたのを思い出した。

「ねえ、面接会場で片方の靴が脱げるような事ってありえると思う?」

彼女はいぶかしげに聞いた。「壁を蹴りつけるなんてどんな質問をされたのかしら?」
僕はなんと答えていいのかわからなかった。
体育会の連中ならやりかねないからだ。
靴の踵を潰すやつに碌なやつはいない。数少ないけれど確かな僕の経験則の一つだ。
でもそんなことはこんな顔の彼女にいえない。
一緒に感想を言わなければならない。

やれやれ、また次スレが立てられたようだ。
雪猫が暴れているのだ。

ぶかっこう