無題:とある面接風景餓狼伝風(仮)

この物語は不完全なフィクションであり、実在の人物、場所、事件とは多分関係ございません


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社会 [就職] “京都教育大学の就職活動 10”
616 名前:1/4[] 投稿日:2009/08/11(火) 14:22:56


  「特技は、仲間の擁護とありますが」
  その男――面接官が言った。
  「はい、仲間の擁護です」
  学生が、口元にうっすらと笑みを浮かべ、そう答えた。
  「仲間の擁護とは、何のことですか?」
  面接官が、再び質問した。
  「冤罪です」
  「冤罪!?」


  にぃっ。
  と。学生が笑んだ。
  「はい。冤罪です」
  くっきりと。
  「全学に、大ダメージを与える、冤罪です――」
  そう、言い切った。
  馬鹿な。
  ここが、どこだかわかっているのか。
  ここで――面接会場で、よりによって――
  冤罪などと!?
  寒気に似たものが、背筋を通り抜けていく。
  「――で」
  ごろり。と石のように、重たい声が出た。
  「その、仲間の擁護は当社において働くうえで……何のメリットがあると?」
  この学生、何を考えているのか――
  そういう思いが、声に滲んでいるのがわかる。
  学生が。
  にいっ。
  と。笑った。
  「ババアが襲ってきても、守れるじゃないか――」
  「ぬぅっ!?」
  馬鹿な――


  「当社には、電凸してくるような鬼女はいない」
  そろり。
  と、面接官が言葉を紡ぐ。
  「それに――それに、誹謗中傷を行うのは、犯罪だ――」
  「でも、検察にも勝てますよ――」
  この学生……
  この学生、人の話をまるで話を聞いていない――
  「いや、勝つとか、負けるとか……そういう問題ではない」
  「bichiに、ダメージを与えるんだぜ――」
  言いきった。
  ごうっ。
  と。ひどく熱いものが、腹の奥から沸きあがってくる。
  「ふざけないでくれ」
  止まらない。
  止まらない。
  もう、この熱いものを止めることが出来ない。
  「それに――それにbichiとは何だ!? だいたい……」
  「99.99%勝てるんだよ」
  まるで、子供に教えるような口調で、学生が言う。
  「 b・i・c・h・i と書くのさ……ビッチというのはな……」
  「そんなことは聞いていない!」
  叫びそうだ。
  「帰れ」
  叫びそうだ。
  「帰ってくれ!」
  だが、そこを堪える。
  「聞いてません。帰ってください」


  そこに。
  張り詰めた糸のように、今にもぷつりと切れそうなそこに。学生が。
  「あれ?」
  と。
  「あれあれ? 怒らせていいのかい――」
  と。言葉を滑り込ませる。
  「通報するよ。ICPOに」
  ぷつり。
  そこで、糸が切れた。
  「いいとも……」
  もういい。
  通報できるならば、通報するがいい。
  「通報してみろ。仲間の擁護意識とやらで――」
  それが、どうしたと言うのだ。
  「私は早稲田・慶応より賢い国立大の学生ですよ」
  もはや、どうでもよくなってきた。
  「それで、満足したら、帰ってくれ」
  学生が。
  にぃっ。
  と。笑う。
  そして。
  「運がよかったな」
  「何!?」
  「また統合の話が流れたようだ――」
  「帰れよ」

たまらぬ学生であった。